それでも僕が憶えているから
ベッドの上で規則正しく穏やかな寝息をたてるおばさん。
少しだけ血色の戻ったその顔を見ながら、わたしはさっきの出来事を思い出す。
蒼ちゃんの不可解な言動について話をしたとたん、おばさんの様子が明らかにおかしくなった。
激しく動揺したせいで発作を起こしたように見えたのは、きっと気のせいじゃない……。
そのとき、勢いよく引き戸の開く音がした。
「蒼。お前も今着いたのか」
おじさんの口から出た名前に、心臓が大きく波打った。
彼と顔を合わせるのはあれ以来で、すぐにはドアの方を見れずに体が固まる。
「お母さんの具合は?」
「心配ないそうだ。彼女が救急車を呼んでくれたんだよ」
「……真緒?」
戸惑いの声がわたしを呼んだ。
おそるおそる、わたしは視線を彼へと移した。