それでも僕が憶えているから
やっぱりあれは――教室で会ったあの人は、別人だったんだ。
同じ顔で、同じ声で、左手には同じ傷痕があって。
だけど蒼ちゃんじゃない、別の人。
あれはいったい誰だったんだろう。
おそらくおばさんは何かを知っている。
蒼ちゃんは?
蒼ちゃんは彼のことを知っているの……?
悶々と考えながら歩いているうちに、わたしたちは裏口から病棟を出た。
細い通路を通って、蒼ちゃんの自転車を止めてある駐輪場へ向かう。