それでも僕が憶えているから
蒼の母親……?
強烈な違和感に、頭の中が歪むような感覚を覚えた。
おかしい。おかしすぎる。
なぜ自分の家族のことをそんな言い方するんだろう。
「どうしたの、蒼ちゃん」
「………」
「ねえ、蒼ちゃ……」
――違う。
名前を呼びながらも、とっさにそう思った。
違うんだ、これは蒼ちゃんじゃない。
別人みたいとかそんな話じゃなくて、本当に蒼ちゃんじゃない。
そうだ、この人は――
放課後の教室で遭遇した、あの左利きの彼だ。