それでも僕が憶えているから
Chapter.2 大嫌いな左手
*
《1》
『僕は、ホタル』
とんでもないやつに関わってしまった。
ホタルなんて名前はちっとも似合わない、傍若無人で獣のような少年。
あいつの話を信じるなら、ホタルは蒼ちゃんの中にあるもうひとつの人格で。
そして、何らかの目的のためにホタルは出てきている、らしい。
「あ、真緒」
「あ、蒼ちゃん」
おばさんのお見舞いを終えて、病院の駐輪場に出たところで蒼ちゃんに会った。
彼は学校のあと一度帰宅してから来たらしく、ラフな私服姿で大きい紙袋を抱えている。
「今日も来てくれたんだ。気を遣わせてごめんな」
「ううん、わたしもおばさんと話すの楽しいから」