それでも僕が憶えているから
救急車でおばさんが運ばれた日から5日。
幸いにも経過は順調で、日に日に元気を取り戻しつつある。
この調子なら早めに退院できそうだ。
「あ、そうだ」
蒼ちゃんがコンビニ袋からアイスを取り出した。ソーダ味の、まんなかでふたつに割れるやつ。
「病室で食べようと思ってたんだけど、半分コしよ」
ぽきん、と上手に割って、右手に持った方を差し出してくれる。
人懐っこいその笑顔を見て、細い針が胸に刺さったように、ちくりとした。
「……ありがとう」
ほんの5日前にも、この場所でわたしたちは向かい合って立っていた。
だけどそのとき、彼は蒼ちゃんではなくホタルだった。