フカミ喫茶店のワケありアンティーク
Menu4 始まりの時を刻む 懐中時計
1
新緑がさらに色づき、この国にいる蝉という蝉が一斉に大合唱しはじめたような、7月下旬。ついに夏休みに突入した。私はというと、今日もフカミ喫茶店でバイトだ。
「はぁ……」
ほうきを手にため息をつく。バイト自体は好きだけど、夏休みなのに喫茶店に箱ずめってちょっと寂しい。
窓に近づいて、雨上がりの照りかえるコンクリートを見つめる。一週間前、梅雨明けをニュースが伝えていた。
今日の最高気温35℃、猛烈に暑そうだと見るだけでぐったりする。今なら鉄板で無残にも焼かれる焼肉達の気持ちが理解出来そうだ。
「あ、そうだ」
ふと、フカミ喫茶店のみんなで遠出が出来たらいいのにと考える。
「バイト……」
バイトの親睦会とか、なんかいい理由はないだろうか。なんせ、うちの店員はインドア派ばっかりだ。深海さんは別だけど、あとの2人がなと悩む。