フカミ喫茶店のワケありアンティーク
「ワンッ」
「おはよう、クラウン」
ワシャワシャと毛並みを撫でて、スンッと匂いを嗅ぐ。ふむ、ワンちゃんのほどよい匂いだ、なんて安心する。すると、クラウンが私のペリドットのペンダントを一生懸命ペロペロと舐めだした。
「どうしたの、クラウン?」
「クラウンは、美葉(みよう)さんの持っていたペリドットのペンダントも、よく咥えて甘噛みしておりました」
深海さんがカウンターキッチンから私たちを見てそう言った。
「美葉……?」
何だろう……その名前がやけに気になる。何でだろうと考えれば考えるほどに、ズキズキと頭痛がした。
「俺も朧げにしか記憶にないが、そのペンダントは母親がつけていた物に似ている。写真もほとんど残ってないからな、確認のしようがないが……」
拓海先輩が切なさを含ませた瞳で私を見つめる。いや、正確に言えば私のつけているペンダントを、だ。
「美葉さんは、拓海くんのお母様ですよ」
聞いた事がない名前のはずなのに、私は知っている。気がするのではなく、ほぼ確信的にそう思うのだ。
『あなたは?』
『私は、来春っていうの!!』
『そう、とってもいい名前ね』
ふと、幼い頃の記憶が蘇る。