フカミ喫茶店のワケありアンティーク
「って、こんな大々的に売り込んでるの、ここ!?」
「利益無しで運営できるほど、世の中甘くないよ来春」
空くん……利益とか、運営とか、世の中甘くないとか。
まさか小学3年生の口からそんな言葉が出てくるなんて、やっぱり年齢を偽っているんじゃないかと疑いそうになる。
「空くんの顔ベリベリッと剥がしたら、実はおじいちゃんだったりして……」
「は?」
空くんに"何言ってんのアンタ"みたいな顔で凝視された。
「話が進まない、お前等は黙ってろ」
「スミマセン」
私達の声が煩わしかったのか、冷ややかな視線と共に拓海先輩からお叱りを受ける。
「そのアンティークドールで、何を知りたい」
「お母さんがどこにいるのか、知りたい」
「……了解」
たった、それだけだった。
もっと話とかしないのだろうか。というか、自己紹介さえしない事に驚く。鑑定がどんなものなのかは知らない。だから私は目の前でアンティ―クドールを受け取っている拓海先輩を、ただただ見守る事しか出来なかった。
「来春さんは、拓海くんの鑑定を見るのは初めてですね」
「は、はい……」
私の時は何故か鑑定が出来なかったから、どんな事をするのだろうと好奇心が湧く。
アニメや漫画みたいに、鑑定の時は目の色が変わるとか、後光が差しちゃうとか、想像すればするほどワクワクした。