フカミ喫茶店のワケありアンティーク
拓海先輩は真剣な瞳でアンティークドールを見つめている。
依頼品に宿る記憶と感情を読み取るって、どんな感じなんだろう。凡人には到底、想像もつかないなと思った。
そんな事を考えていると、ふと拓海先輩を中心に空気が澄んでいくような奇妙な感覚を覚えた。
ゴクリと、唾を飲み込む。
一体、何が始まるのだろう。そんな事を考えている間にも、しばし沈黙が続く。
そして、それは拓海先輩の言葉によって唐突に終わりを告げた。
「鑑定を、始める」
***
──パラパラパラパラ。
何十、何千もの紙が暗い空へと吸い込まれていくのが見える。
──否、俺が暗い闇の底へと落ちているのだ。
この紙は、依頼品に宿る記憶と感情の数々。それをエピソードと俺は呼んでいる。