両手いっぱいの花束をあなたに
放課後、ぜったい寄ろう。
そう決めて、私は先程よりさらに足早にバス停へと向かった。
ープシューッ
そして、バス停が見えてきた所で、ちょうどバスが到着した。
同じ高校の制服を着た生徒たちの後ろに並んで、そっと息を整える。
実は……って、実はっていうほどの事じゃないけれど、私は運動と勉強が苦手。
花の事ばかり考えているせいか、『頭もお花畑』って言われるくらいだ。
「花音、おはよ!相変わらずの駆け込み乗車ね」
私の2人先に並んでいた親友の一条 美緒(いちじょう みお)が振り返えって手を振ってくる。
美緒は、クラスでもマドンナ的存在で、美人でスタイルも良くて、面倒見が良い。
私から見ると、姉御みたいな存在。
私とは違って長い黒髪を、耳にかける仕草なんて、もう惚れ惚れする。
「お弁当忘れちゃって」
「あれ、花見に行ってたんじゃなかったの?てっきり寄り道してたのかと思ったよ」
「んうーっ……我慢した」
「ふふっ、苦渋の決断だったのね」
苦渋の決断だったなぁ、あれは。
苦しげに眉を寄せる私に、美緒はクスクスと笑う。