両手いっぱいの花束をあなたに


でも、私は美緒の腕を後ろから引いた。

すると、美緒は私を驚いたように振り返る。



「いいんだ、美緒……」


「なんでよ、花音は何も悪くな……」


「本当なら、私がそう言わなきゃいけなかった。なのに、私は美緒に言わせて……」


颯と私の事だからこそ、私が柿原さんに言わなきゃいけなかった。


「花音……。今日は帰ろう、そうだ、帰りにチョコレート買ったげる!」


「うん、ありがとう、美緒」


私を励まそうとしてくれる美緒に、ぎこちなく笑みを返す。

美緒の優しさに、少し救われた気がした。





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