両手いっぱいの花束をあなたに


「それは、俺、花音先輩の彼氏だし、ただでさえ、後輩っていう壁があるから。俺だって、ドキドキさせてーつうか…」


「私の心臓がもたなくなっちゃうよ…」


「それくらい、俺の事考えてて。俺も、花音先輩の事ばっか考えてるんだから」


そう言って笑う颯は、やっぱり私より余裕がある。


なんというか、私、翻弄されてるなぁ…。


「俺は、花音先輩しか見てねーから」


「う、うんっ」


あぁ、あんなに不安だったのに…。


不思議、不安にさせるのも、そして安心させてくれるのも、全部颯っていう存在だなんて…。


赤い、シクラメン…。


『嫉妬』の意味を持つこの花の花言葉の意味を、私だけを見ていて欲しいって気持ちを、今日初めて知った。





< 113 / 351 >

この作品をシェア

pagetop