両手いっぱいの花束をあなたに
「手、繋ぎてーけど、花音先輩小さいから、俺の腕なら、楽に掴めるだろ?」
「う、うん……っ。颯、おっきいもんね」
わぁ……っ。
トキドキするけど、やっぱり颯に触れていたい…。
颯も、そう思っててくれてるんだとしたら、嬉しいな。
ギュッと颯の腕にしがみついて、2人、学校までの道のりを歩く。
雨音が聞こえる。
それほどまでに、私たちの間には沈黙があった。
なのに不思議…。
何か話さなきゃ…とか、そういう緊張感は無い。
この沈黙さえ、心地よかった。
「にしても、雨とか最悪だな……花音先輩、濡れてないか?」
「うん!大丈夫!…私は、雨も結構好きだよ」
颯と歩くイチョウ並木。
いつもならバスを使うし、バス停までは1人だった。
今日は、そんないつもとは違う、特別な日だ。