両手いっぱいの花束をあなたに


「私の部屋、2階にあるんだけど、そこからこのイチョウ並木を見下ろしたらね…」


私は、今日の朝の出来事を颯に話した。


「歩いてる人達の傘が、花みたいに見えて、綺麗だったの!」


「へぇ、俺も見たかったな。また雨降ったら、写メ送って」


颯は、私の話を一緒に楽しそうに聞いてくれる。


それが嬉しくて、私ばっかり、たくさん話してしまった。


「うん!あ、あとね!雨が降ったから、颯とこうして朝も一緒にいれるんだし、私は、雨に感謝してるよ!」


「そ、そうっすか…。お、俺も…花音先輩と一緒にいれんの、すげー嬉しい」


颯が、照れ臭そうにソッポを向きながらそう言った。

少し赤い颯の横顔を見つめながら、幸せだなぁと思う。


「あ、颯!あそこで猫が雨宿りしてるよ、可愛いね!」


ふと前を向いたら、カフェテラスにあるテーブルの下で、丸まっている三毛猫を見つけた。


「ブッ、ククッ、花音先輩から見えてる景色って、俺とは違って、何でも綺麗に映ってるんだろーな」


颯は、笑顔で私の顔を見つめる。


それが、何故か愛しいモノを見るみたいに暖かい眼差しだったから、私は照れてしまった。




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