両手いっぱいの花束をあなたに



「あっ、俺いつの間に??何か、もうこっちの方が呼びやすくなってんな……」


「颯が私をそう呼んでくれる日を、ずっと待ってたよ」

 
「っ……ま、待たせて悪かった」



また顔を赤らめる颯に、私もつられて赤くなる。

どさくさに紛れて、私は何を言ってるんだ。

「待ってたよ」とか……大胆すぎた。

 
「そういえば、予鈴……」


予鈴鳴ってから、だいぶここにいる気が…。


ーキーンコーンカーンコーン


「あ!!」


そんな事を考えていると、まさかの本鈴が鳴ってしまった。

私は、声を上げて颯を見る。


「やべー、急いで戻るか」


すると、颯が私の左手を引いて、駆け出した。


「先生には、お腹が痛かったので、トイレと友達でしたって、言い訳しよう!」


隣を走る颯に繋いでない方の手でピースして笑うと、颯は「ぶっ」と吹き出した。


「賛成!」


そう言って、ピースを返してくれる。


授業が始まっているというのに、私達は笑って、ふざけ合いながら、それぞれ教室へと戻った。




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