両手いっぱいの花束をあなたに


こんな顔で、颯に会いたくない。

だけど……会わないわけにもいかないし…。



お父さんとお母さんが、ここにいなくて良かった。


お母さんは、ちょうど数分前に、花の取引先から連絡が入って、奥にいるのだ。


お父さんはというと、足りなくなった肥料とか、他に必要な雑貨を、買い出しに行っている。



泣きそうな顔なんかしてたら、絶対心配されるから……。


「もう、どうしよう……っ」


お店の中で立ち尽くしていると、入り口付近の花を見ていた颯が中へ入ってきた。


「花音、出来たか……?」


「うん……えと、2845円です」


私は、泣きそうなのを隠すように、俯いてそう言った。




 




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