両手いっぱいの花束をあなたに


「風邪を引く、これで拭いて」


どうやら、私の為にタオルを探してくれていたらしい。

ありがたくそのタオルを受け取った。

よく見ると、女の子の方が私にビニール傘をさしてくれていた。


あぁ、だから雨が止んだんだ……納得。


あんな風に遠目に笑う人もいれば、こんな風に優しく傘をさしてくれて、タオルを貸してくれる人がいる。


優しい、人達なんだなぁ……。


「ありがとう、えーと……」


名前が分からなくて、なんて呼べばいいか迷ってしまった。

言葉に詰まっていると、2人が同時に私を見る。


「一条 美緒よ」

「一条 勉だ」


それに気づいたのか、2人はまたもや同時に自己紹介をしてきた。


「おおっ、またもや同時だね」


おかげ様で、聞き取れたのは、重なっていた「一条」だけ。

あぁ、やっぱり双子さんだったんだ。

顔似てるし、タイミングも抜群にシンクロしてる。
  






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