両手いっぱいの花束をあなたに
「嫌なら、拒んでいいから………」
そう言って、颯は私の顎をクイッと持ち上げる。
それに、これから颯がしようとしている事を悟った。
「は、はや……て…」
「愛してる、花音………」
そっと近づく唇に、私は目も閉じられずに固まる。
こういう時、私はどうすれば!?
い、息はしていいの!?
目は、閉じないとだめ!?
軽くパニックを起こしていると、颯は花束を持つ私の手を掴んで、持ち上げた。
そして、ちょうど通行人から見えないよう私たちの顔を隠す。
フワリと、チューリップの花の匂いが鼻を掠める。
そしてすぐに、ライムの柑橘系の香りが混じって……。
ー颯の、香水の匂いだ……。
花とライムの柑橘系の香りが、頭をボーッとさせる。
花に酔ったみたい…。
それが、私たちの距離がほとんど0に近いことを知らせる。
「………花音、愛してる」
「っ………うん、私も……」
最初は戸惑って、少し怖いなと思った。
だけど、颯は何度も私を安心させるように「愛してる」って言ってくれたから……。