両手いっぱいの花束をあなたに


なのに、颯は私の方を見ようとはしなかった。


「………悪い、今は一人にしてくれ」


そう言って、颯は控え室へと歩いて行く。


「颯っ!!」


お願い、行かないでっ!!

颯、私から離れないでよ!!


追いかけようとして、颯の傍に、柿原さんが寄り添うのが見えた。


「颯、私が支えるから、次は練習メニューを変更して…」

「あぁ、悪いな、柿原」


ーズキッ!!

心臓が、強く軋んだ。


後の会話は聞こえなかった。


でも、柿原さんはバスケのマネージャーで、バスケの事も、颯の事も詳しい。


私より、颯の事……支えられる。


「きっと……これでいいんだ……」


なのに、何でだろう……。

ジワリと視界が滲んだと思ったら、ポタリと涙が溢れ落ちた。


「っ………颯っ……どうしてっ……」


どうしてっ……。

私は、あの時、私の方が支えられるって、言えなかったんだろう。


結局、弱いのは、逃げたのは私だっ…。



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