両手いっぱいの花束をあなたに


「じゃあ、家まで送る。そんで、その間だけ、俺の話聞いてくんねぇーか??」


「黒崎くん……」


黒崎くん………話って、何??


「聞いて欲しい……事があんだ」


そう聞きたかったのに、あまりに真剣な顔をするから、私は何も言えず、頷いてしまった。



「花音………?」


2人、見つめ合っていると、不意に後ろから声をかけられる。


私と黒崎くんは、同時に声の聞こえた方へと、視線を向けた。

すると、そこには……。


「……と、ヤンキー野郎?何で、2人が一緒に……」


外周から戻ってきたのか、首からタオルをかけた颯が、私たちを見つめて、呆然と立ち尽くしていた。
 
   

「颯………」


颯と連絡を取らなくなって3日。


なんだか、声を聞くのも、姿を見たのも、もう何年も遠い昔のように思えてしまった。


颯、少し痩せた……?

顔色も悪いし、目の下のクマなんて、酷い。






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