両手いっぱいの花束をあなたに



「俺は、花音にこれ以上………」


「ほら、颯は早く練習戻らなきゃ?」


何かを言いかける颯を、柿原さんの言葉が遮った。


颯、やっぱり颯は……傍にいてって、言ってくれない。


私じゃダメ?


柿原さんじゃなくて、私が支えたいのに……。


こんな弱ってる颯を、見ている事しか出来ない。



「そちらさんが忙しいなら、もう行こうぜ」

「えっ……」


ーグイッ


黒崎くんに腕を引かれて、自然と黒崎くんに寄り添うような体制になる。


「お前っ……」

「文句言う資格、あんのかよ、チョコレート頭」


黒崎くんは、私を引き寄せたまま、颯を睨み付ける。

颯は、一瞬息をつまらせた。


「………花音は、俺の彼女だ」


「颯………」


そっか、良かった……。


私、まだちゃんと颯の彼女なんだ。


どこかで、颯が私と別れるって言ったらどうしようって、不安になってた。


何より、颯の口から聞きたかったんだよ…。




< 265 / 351 >

この作品をシェア

pagetop