両手いっぱいの花束をあなたに
「……っ……」
私は、それから視線を逸らすように、前を向いた。
今、黒崎くんが手を引いてくれて良かった。
でなきゃ、ショックであの場所からも逃げ出せずに、ずっと立ち尽くしていただろうから…。
「花音………行くな……っ」
背中越しに、そんな夢のような幻聴を聞いた気がした。
そんな事、颯が言うはずないのにっ…。
私が、そう言って引き留めてほしいって、思ってたからかもしれない。
颯、今何を思っていますか?
私は、まだ颯の中にいますか??
「っ……颯、傍にいてよ……」
私は、滲む視界と、掠れる声で小さく呟いた。
颯には、きっと届いて無い。
あぁ、本当に一人じゃなくて良かった。
誰もいなかったら、ここで泣きわめいてたかもしれない。
力強い黒崎くんの腕に、心から感謝した。