両手いっぱいの花束をあなたに


「………黒崎くん」


「オー?」


学校から離れて、私達は、いつものイチョウ並木を歩いている。

そう、いつもと違う事といえば……隣に、颯がいない。


何も言わない黒崎くんに、私は自分から話しかけた。


「黒崎くんの話って……何??」


黒崎くんは、話したい事があるって言ってた。

私は、それを聞かなきゃいけない気がする。

だって、あの時の瞳はすごく真剣だったから……。



「そーだな、聞いてくれっか??」


「うん、もちろんだよ」


笑みを向けると、黒崎くんはホッとしたように笑みを浮かべる。


「俺が、インターハイ予選の時に、チョコレート頭に言った事……覚えてっか??」


「それって……」


私はあの日、黒崎くんが選手の控え室前で言った言葉を思い出した。


『守れねーなら、大切なモンなんか作るんじゃねーよ!!勇気が無ぇなら、戦うな!!』


「守れないなら、大切な人作るなーとか、勇気がないなら戦うなってやつ?」


「そう、それそれ」


黒崎くんは自分のピアスを指で弄りながら、フイッと斜め横を向いた。


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