両手いっぱいの花束をあなたに



「でもな、三雲と一緒に戦った一年、あいつは、負けるかもしれないっていう恐怖にすら、立ち向かって、本気で戦ってた。それを、勇気って言うんだって、三雲から教えられてよ」


「勇気……」


「スポーツは、勝者と敗者しかねぇ。負けと隣り合わせの一発勝負。そんなん、その戦場に立った時点で覚悟してなきゃ、そいつは、スタートラインにも立ててねぇーんだよ」


そっか……あの時、黒崎くんは決して颯を責めようとして言ったんじゃない。



「もしかして……黒崎くんがそれで、また立ち上がる事が出来たから、颯にも言ってくれたの?」



「…俺に似てんだ、チョコレート頭はよ。見てて、こうー、モヤモヤすんだわ!」



そう、言った黒崎くんの顔は、なんだか照れ臭そうだった。

そっか、黒崎くんは、優しいんだな。

同じ学校じゃない、颯の事も思って声をかけてくれた。



颯に、届くといいな……。

それで、颯ももう一度バスケを楽しめたら……。








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