両手いっぱいの花束をあなたに


「え?それは、颯の方だよ!」


「………花音が天然なのか?いや、それともあのチョコレート頭、牽制して回ってたんじゃねーか!?」



黒崎くんは何かをブツブツ呟いている。

そんな黒崎くんを見つめながら、私は颯の事を思い出していた。



颯……。

どんなきっかけでもいい、それが、柿原さんの存在でも良いから……。

もう一度、笑顔の颯が見たいよ……。



「あ………」


「あ?あぁ、家って、ここかー?」


気づけば、私の家の前までたどり着いている。

随分、時間が短く感じられたなぁ…。

黒崎くんの話に、聞き入ってたみたい。



「黒崎くん、今日は本当にありがとう」


この感謝を、どうにかして伝えたいけど…。

もらったモノが大きすぎて、返すものに迷う。


「俺の方こそ、付き合わせちまったな」


私達は向き合って、笑みを交わした。
 

すると、店の外に、新しく入荷した紫色のカンパニュラが並んでいるのに気づいた。
 

カンパニュラの花言葉は………そっか!!


「黒崎くん、ちょっとだけ待ってて!」


「んお?おおー」


突然声をあげた私に、黒崎くんは驚く。

私は、カンパニュラの花を手に、ラッピング紙を切った。    






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