両手いっぱいの花束をあなたに


「なぁーに、また颯くんにプレゼント?」



カンパニュラで小さな花束を作る私に、レジのお母さんがニヤニヤと聞いてくる。 



「ううん、今回は違う人。友達……みたいな感じかな」


「花音が友達に花をあげるのは、あの双子の子達以来じゃないか?」


入荷の花を運んでいるのか、ダンボールを抱えたお父さんが、私に声をかけてくる。



「そうだっけ?」  


でも、そうかもしれない。

私にとって、大切な友達は美緒とつっくんだ。

そして、今日また大切な友達が出来た。


「よし!」


カンパニュラの紫の花が、美しく揺れている。

そういえば、カンパニュラには神話がある。


ギリシア神話……だったかな。


美しい精霊のカンパニュールは、オリンポスの果樹園の番人をしていて……。


ある日、兵士が果樹園に侵入し、カンパニュールは銀の鈴を鳴らし助けを呼ぶんだけど、兵士に命を奪われてしまうんだよね。 


花の女神フローラは、その死をいたんで、彼女を鐘の形をしたカンパニュラの花に変えたんだって。


「精霊の花なんて、神秘的だよね」


鈴のように揺れる花達から、鈴の音が今にも聞こえてきそう。










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