両手いっぱいの花束をあなたに



「ありがとうございました!」


「いいのよ、ホホッ………」


「ワンッ」


「お前も達者でいろよーっ!!」



そう言って、そそくさと帰るおばあさんを、黒崎くんは見送った。

私は改めて黒崎くんに向き直る。



「黒崎くん、これ……」


「ん!?これ、俺にかっ!?」


差し出す花束を、黒崎くんは驚いたように受けとる。



「これはね、私からの『感謝』の気持ち」


「感謝?俺、何もしてなくね?」


「黒崎くんは……私の大切な人を、助けようとしてくれた」


颯が、このままどん底に落ちないように、這い上がる為の言葉をくれた。



「それに、私の事を心配してくれたでしょ?これはね、カンパニュラ…『感謝』の花だよ」


「感謝………」


黒崎くんは、なぜか目に涙を浮かべて、花束を見つめる。

そして、顔を上げると、真っ直ぐに私を見つめた。





< 278 / 351 >

この作品をシェア

pagetop