両手いっぱいの花束をあなたに


「結婚してください」


静かに、そして噛み締めるように伝えられた。

つい数秒前まで顔も知らなかった、颯くんから衝撃の一言。

そして、バサッと目の前にポピーの花束が差し出される。



ーあれ、私、今告白……いや、プロポーズされた?

それは、突然に訪れたプロポーズ。


頭が軽くパニックを起こしていて、フリーズする。


「一目ぼれでした。あなたが好きです」

「っ……」


ー名前も知らないのに。

ー恋なんてした事ないのに。


トクンッと、胸が高鳴るのを感じた。

この気持ちがなんなのか、分からないけど…。


そっと両手で胸を押さえる。


颯くんの、その真っ直ぐな瞳に、その瞳から伝わる優しさに、なぜかとてもトキメキを感じた。  




< 29 / 351 >

この作品をシェア

pagetop