両手いっぱいの花束をあなたに
【颯side】


「か……のん……?」


俺は、泣きそうな顔で走り去った花音を思い出す。

あんなに感情をさらけ出した花音を見たのは、初めてだった。


『ずっと傍にいたいって思ったよ!!』


いつも、優しく微笑んでいる花音を、あそこまで追い詰めたのは、俺だっ……。


何がいけなかったのか……それは、いつも自分の事ばっかりだった俺の責任だ。


だけど、どうすれば良かった?


あの時、俺は……自分の弱くてボロボロな姿を花音に、見せたくなくて、逃げたんだ。


「花音の気持ち……なんも考えてなかった……」


いつも、被害者は俺だった。


違うだろ、幸せにするって決めた女を、不幸にしてるのは、俺じゃねーか。


笑顔が一番似合うのに、泣かせてるのは……。


「俺じゃねーかよっ」


俺は、くしゃりと前髪をつかんで、奥歯をギリッと噛み締めた。




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