両手いっぱいの花束をあなたに
1.ポピー
ージリリリリリッ
「んっ……ん~っ」
けたたましいアラームの音に引き上げられるように、私の意識は急速に浮上する。
ーカチッ
手探りで探したスマホのアラーム停止ボタンを押す。
いつの間にか、目も開けずに停止ボタンを押せるほどに、いつもの変わらない朝。
やっと静かになった部屋で、私はゆっくりと瞼を持ち上げ、カーテンから差し込む眩しい光に促されるように目を開けた。
「ふわぁ……っ」
大きなあくびをしつつ、私はギシッとベッドのスプリングを鳴らしながら、体を起こした。
スマホのディスプレイには、『07:05』。
私は壁のフックにかかる高校の制服を取りに立ち上がり、袖を通す。
4月半ば、始まりの季節、春がやってきた。
私、野木 花音(のぎ かのん)は、4月で高校3年生になった。
白のYシャツの上に紺のブレザーを羽織り、赤いリボンをつける。
紺地に赤のチェックスカートは、少しだけ膝上までまくって、鏡台の前に立った。