両手いっぱいの花束をあなたに


「先ぱ……」

「花音」

「え……?」


数歩先まで歩いて、私は颯くんを振り返る。

すると、颯くんは不思議そうに私を見つめた。


「花音って、呼んでほしいな」

「うっ……そ、それはハードルがっ…たけぇ…」

「プロポーズよりかは低いハードルだと思うよ?」

「うっ……」


図星だからか、颯は真っ赤な顔で項垂れる。

すると、意を決したようにバッと顔を上げて、私を見つめる。


「か………か、花音…先輩」


ードキンッ

一際大きく心臓が跳ねた。


苦し紛れに『先輩』は外せなかったみたいだけど、それでも、私が颯くんに花音って呼ばれたのは、これが初めてだ。


「っ!!」

颯くんが、私の名前を呼んでくれた。

なにこれ、すごく……すごくっ…。


「嬉しい、は、颯……」


良かった、私も颯って呼べた!

私は胸を押さえながら、颯に笑顔を返した。


「っ……その、顔、反則だし…」

すると、颯は謎な発言を残して真っ赤な顔で私を見つめる。


呼び捨て、したらまずかったかな…。

私も、そうやって呼びたかったんだけど…。






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