両手いっぱいの花束をあなたに
「花音先輩、やっぱ覚えて無かったか……」
「え??」
すると、颯は苦笑いを浮かべる。
覚えて無かったって、私は何かを忘れてる??
「花音先輩、すげー不思議そうな顔してる」
クククッと可笑しそうに笑う颯に、私はさらに首を傾げた。
それはもう、フクロウに匹敵するくらいの首の回りよう。
「俺が花音先輩に会ったの、入学式の時なんだよ」
「嘘、入学式?」
うーんと、入学式の日を思いだそうとしても、すっかり忘却の彼方だ。
「俺、入学式の日に、道に迷ってて……」
そう言って、颯は話し出す。
私と颯の、本当の出会いの始まりを。