両手いっぱいの花束をあなたに


「花音先輩、やっぱ覚えて無かったか……」

「え??」


すると、颯は苦笑いを浮かべる。

覚えて無かったって、私は何かを忘れてる??


「花音先輩、すげー不思議そうな顔してる」


クククッと可笑しそうに笑う颯に、私はさらに首を傾げた。

それはもう、フクロウに匹敵するくらいの首の回りよう。


「俺が花音先輩に会ったの、入学式の時なんだよ」

「嘘、入学式?」


うーんと、入学式の日を思いだそうとしても、すっかり忘却の彼方だ。


「俺、入学式の日に、道に迷ってて……」


そう言って、颯は話し出す。

私と颯の、本当の出会いの始まりを。



< 45 / 351 >

この作品をシェア

pagetop