両手いっぱいの花束をあなたに


2階にある自分の部屋から降りると、リビングに顔を出す。

すると、親父が同じように鏡で執念に髭を剃っていた。

いつもなら、適当に剃って終わりなのに。


「おはよう、颯」

「はよ、お袋、親父何してんだ?」


キッチンでご飯を作っているお袋に声をかけると、お袋はそれはもう黒い笑みを浮かべた。


「あれは、新入社員の女の子に良く見られたいっていう穢れた考えからきてるのよ」

「うっ!!」


わざと聞こえるように大きな声でそう言い放ったお袋に、親父が呻き声を上げる。


俺はそそくさと逃げるようにテーブルに向かい、席に座った。

そして、親父に小声で話しかける。




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