両手いっぱいの花束をあなたに
「お袋怒らすなよ」
「身だしなみだよ、身だしなみ!そういう颯だって、今日髪いじってんだろ?」
今年38になる親父、松島 荘二(まつしま そうじ)は子供じみた言い訳をする。
「身だしなみだろ、身だしなみ」
決して、気合いを入れてお洒落したわけじゃない。
……断じて違うぞ、俺は。
そんな事を話していると、俺と向かいに座った親父の前に、ドンッ!!と、モヤシ炒めが置かれた。
周りに、モヤシが吹き飛ぶほどの勢いだ。
「………楓??(かえで)」
親父は、怯えた声でお袋……松島 楓の名前を呼ぶ。
「お、お袋……」
ヤバい。
若干、恐怖に声が震えた。
これは、完全に怒りメーターMAXの時だ。
静かに、笑みを浮かべたまま毒を吐くから恐ろしい。