両手いっぱいの花束をあなたに
入学式だっていうのに、災難だな。
朝の事件を思い出しながら、俺は自転車を漕ぐ。
イチョウ並木をしばらく進んでいると、腕時計の時間が08:30を指していた。
「げっ、ギリギリじゃん」
これも、親父のせいだぞ。
あの恐怖にフリーズしていた時間が、思いの外長かったらしい。
よし、ここら辺曲がれば、近道とかになるんじゃね?
俺はここら辺の地理に詳しくないのに、近道に違いないと、根拠の無い自信で進んでいく。
すると、いっこうに学校らしきモノが見えて来ない。
あげくの果てに、俺は住宅街の公園にたどり着いてしまった。
「どこで道を間違えた?」
いや、確実にあの近道だと過信した所だろうが。
と、自分にツッコミを入れて虚しくなる。
迷子だ、潔く認めよう。
自転車にまたがったまま、俺は困り果てて、空を見上げた。
あぁ、良い天気。
今日は最高の入学式になるはずだったのに…。