両手いっぱいの花束をあなたに



「あ、ありがとうごさいます!」

「あ、ちょっと待って……」


お礼を言って、ペダルに足をかけると、女の子にひき止められた。


何だろうと思って女の子を見ると、花束からオレンジのガーベラを1本引き抜いて、俺に近づく。


え……?

すると驚く事に、俺の耳の上と髪の間に、ガーベラを差した。


「入学、おめでとう。あなたの未来が、希望で溢れますように」

「っ!!」


そう言って、フワリと笑った女の子の顔を、俺は一生忘れないと思った。


始めに会った時は一目惚れしていたんだと思う。

そして今この瞬間に、俺はこの人に恋に落ちたんだと、気づいた。


「あ、ありがとうございます!」


それからは、どうやって高校へたどり着いたのか、覚えていない。



入学式の事なんてどうでもよくなるくらい、俺の頭の中には、ガーベラの花を贈ってくれた女の子の事で、いっぱいだったから。




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