両手いっぱいの花束をあなたに

【花音side】


「花音先輩の笑顔に、すげぇ…惚れた。それに、優しい女の子なんだって思ったから…」


照れ臭そうに話す颯くんに、私はハッと思い出す。


そうだ、あの日、学校から、入学式の日に校舎の来賓入り口の花瓶に生ける花を頼まれて、それを届ける途中に公園に寄ったんだ。


そしたら、同じ高校の制服を着た男の子がいて、つい気になって声をかけたんだっけ。


「あの時の男の子が、颯だとは思わなかったな…」

「えっ、思い出したのか?」

「うん、たった今」


すると、颯は「そうか」と言って、嬉しそうにはにかむ。

その笑顔に、私までなんだか、はにかみたくなった。


ー私も、颯の笑顔好きだな。

向日葵みたいで、すごくキラキラしてるんだもん。



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