両手いっぱいの花束をあなたに


私の家の前にたどり着くと、お互いにパタリと会話が止んだ。

そして、向かい合うように見つめ合う。


「お店、俺の家から近いんだな」


「颯くんの家もここら辺?」


「花音先輩の家の1つ前の曲がり角を曲がって真っ直ぐ」


「そうなんだ…じゃあ、また一緒に帰れる?」


これで最後っていうのは、寂しい。

すがるように颯を見上げると、颯は照れ臭そうに私からフィッと視線を反らす。


「あ、あたり前っす、お、俺の彼女…なんだし…」

「良かった……嬉しい」

「うっ!」


私が笑うと、颯は胸を押さえて呻いた。


「は、颯?」

「何もない、大丈夫……」


顔を見ると、顔色も悪くないみたいだし、大丈夫か。

安心して、私はホッと息をはく。



< 58 / 351 >

この作品をシェア

pagetop