両手いっぱいの花束をあなたに


「行ってきます」


花屋の『open』の看板を出すお父さんに声をかける。


「気をつけるんだぞ、行ってらっしゃい」


お父さんはそう言って優しく笑いかけてくれた。

すると、バタバタと店の奥からお母さんが走ってくる。


「花音、お弁当忘れてるわよ!」

「あ……」


そう思って自分の鞄を確認する。

すると、やけにガラガラで、軽い。

そっか、私、大事なご飯を忘れてたんだ。


「まったく、この子は……気をつけなさいね」

「ありがとう、お母さん」


困った顔をするお母さんからお弁当をもらって、今度はしっかりと鞄に入れる。


時刻は08:09。

スマホで確認をして、少し早足で歩いた。

これから、8分ほど歩いてバス停に向かう。

そのバスは、08:20発なので、少しぎりぎりだ。




< 8 / 351 >

この作品をシェア

pagetop