両手いっぱいの花束をあなたに


「颯……私も、もっともっと……」

「……ん」

「颯に近づきたいって、思ってるよ…っ」


今は、これが精一杯だけど…。


ちゃんと自分の気持ちと向き合って、いつか、胸を張って颯に「好き」って伝えたい。


でも、今確実に分かった事。

それは、私も颯の傍にいたいって思ってるって事。

声を聞くたび、触れる度に、どんどん気持ちが溢れてくるって事だった。


「先輩、今日放課後少しだけ時間ある?」


颯は、少し私から体を離して、そう声をかけてきた。


「うん、あるよ」

「なら、バスケ見に来ない?俺、花音先輩に見に来てほしい、つか、少しでも俺の事、知ってほしいから」


「颯………もちろんだよ!」


その気持ちが嬉しい。

私も、颯の事をたくさん、たくさん知りたいよ。


「よっしゃ、そしたら俺、いつもの1億倍、頑張るから!」

「ふふっ、応援してるよ」


私がそう言って笑うと、颯は一瞬息をのむ。


「わ、笑うとか、禁止っ!」

「え?どうして!?」

「こうしたくなるだろーが!」


そして、また強く抱き締められる。

颯に抱き締められながら、風に揺れる色とりどりのポーチュラカが見えた。


花言葉は『無邪気』。

嘘偽りなく、素直な颯には、ぴったりだと思った。


真っ直ぐすぎる颯の包容に、私は、愛しくてたまらなくなり、笑みがこぼれた。





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