徒然飛花前線



にやりと口角をあげたわたしは、クビを傾げてみせた。いいでしょう、選ばせてあげよう。暖斗に。



「聞きたい? 暖斗くん」

「くん付けこわっ。聞きたい!」

「夏祭りのことだよ」

「え、覚えてんの? 聞きたい」

「覚えてないの~?」



ついににやけをおさえきれず口元を手で覆いクスクス笑い出すわたしに、はて、と暖斗も首を傾げた。

きょとん、とした表情から一変、ぼっと顔を真っ赤にしたころには時すでに遅し。



「まままままて、夏祭りってあの……」

「そうそう、暖斗が漫画のマネしたアレだよア・レ」

「ブッ」

「かっこよく告白してきたの、打ち上げ花火のとき」

「やめろ! 忘れろ!!」



心地よい陽気に似合わず首まで赤く染める暖斗がわたしの口をふさごうと手を伸ばしてくるのを全力で無視。
そんな力には負けません、なんたって丈夫に成長したわたしですからあ!




「恋とかもよく分かってないくせに真面目な顔して “好きだ、陽和” って!!」

「うわあぁぁあぁああぁ!!!!」




ダメージをくらいにくらって残機がゼロになった暖斗はその場で力尽きた。


いやーかわいかったなー!
あのときの暖斗すごくかわいかったなー!!



「ヤメテ……ワスレテ……」

「“好きだ、陽和”」

「アァァ…………」


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