徒然飛花前線
「……うん?」
「さっきので改めてよく考えてみたらそう思った」
桜の花びらが空を舞った。
解き放たれた生徒たちのさわがしい声が校舎全体から聞こえてくる。そのうちこの中庭にも他人がやってくるだろう。
「……え? ネタ? ネタとして?」
「ネタはさっきのじゃん。俺の恥ずかしい過去じゃん。それを機に考えたんだって。今の気持ち」
「おっ、おう……」
「で、俺、陽和のこと好きなのかなって。どう思う」
「えー。本人に聞いちゃうんだ。えー……」
さっき転がって悶えてると見せかけてとんでもない結論にたどり着いていたらしい暖斗は、ケロリいつも通りの表情で問いかけてくる。
なにを言ってんだこいつは。
うわっなんか、とと、トリハダがたった。
「……ど、どうする、好きな子(仮)に生理的に受け付けられてないみたいだけど」
「大丈夫。俺も言いながらトリハダたってるから」
「はあ!?」
引きつった顔のわたしといつも通り口角の上がった暖斗。
肩をあげてぶるりと身を縮こませて、ふたりとも同じポーズで向かい合う。なんだこれ。なんだこれ。