徒然飛花前線
はあ平和。あったかい。
雲がほどよく影を運んできて木々に反射して。ちょうどいい気温。
お昼休みのその前。
世間は絶賛授業中、そんなときにひとり感じるこのしんとした空気の、なんと贅沢なことか。
心地よい陽だまりにまぶたが落ちてきて、あれぇ、昨日十分寝たはずなのに……と思いながら意識を手放そうとした、その時。
鼓膜をゆらした、ひとつの足音。
それは校舎の内側から戸を開けて階段を飛ばしてストンッと地面に着地。
そのままゆったり廊下をこっち側に歩みはじめる。
───うそでしょ、本当に来た。
まっすぐ進まないで、本当に、廊下の切れ目からこっちに来ちゃったらどうしよう。中庭に足を踏み入れてしまったら。
目が、合ってしまったら。
小さく能天気な鼻歌と共に近づいてきたその音は途中で止み、つま先はこちらに、わたしと同じ色つまり同学年の上履きの色をしたつま先は、中庭に足を踏み入れた。