徒然飛花前線



「いやでも行事とかより日常のほうがよく思い出すし懐かしいし大切に思えるって稲垣先輩が言ってたな」

「……稲垣先輩ってだれ」

「サッカー部だった2個上の先輩。このまえ卒業しちゃった」



ぼーっとしてた。なんの話だったっけ。

暖斗のほうへ向き直ると、思い出してひらめいたような、明るい表情をしてた。いつも明るい表情してるけど。



「なんで仲いいの。アンタ陸部じゃん」

「体育祭の応援団一緒にやった!」

「ふーん」



暖斗はそういう、みんなの前に出て人をひっぱったり楽しませたりするのが好きな、いわゆるムードメーカーみたいな奴で。普段の表情からも分かるように。
だから目立つ。

だから1年女子にも告られる。



「俺らも昔のこと特別な日のことより日常のほうが覚えてんじゃん。子供のころよく陽和ん家でお菓子つくったとかさ。夏祭りのこととかより」



暖斗は大発見を喜ぶかのようにわたしにそう訴えてきて、目を輝かせる。刺激なんてなくてもいつも楽しそうねぇ君は。



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