徒然飛花前線



わたしたちのふたりの脳裏にあるのは、当然のように同じ色の思い出ばかりだから。



「プリンとか作りすぎて子供ながらにプロの腕前だったもんね」

「そう! おばさんもびっくり」

「昼寝してはおねしょしてたね、暖斗が」

「やめてよいつまで言うの」



昔に想いを馳せればノスタルジーに包まれて、お隣さんの暖斗の幼少期なんて成長順にいとも簡単に思い出せる。

家の周りにも咲いてたね、桜。



「陽和はドジで怪我の多い子供だったなーよく転んでた」

「それを経て丈夫なわたしに成長したよ」

「お手々つないで登下校してた俺たちすげーかわいいな」

「犬の散歩みつけてはついて行こうとする暖斗のお守りは大変だったし」



今と変わらないあの家で。
半笑いで紡ぎ出す思い出たちをお互いにひっぱりだした。

なんてことない日々のことも思い出せばたくさん記憶があるものだなあ、そういえば。


他にすることもないからなんとなく、同じ空間で同じ空気の中で同じ思い出たちを掘りおこしていると。



「…………あ、あぁー……、あは」

「なに、怖っ、なに思い出したん」



思い出しちゃったなー。日常のこと以外も。特別な日のことも。なつかしいなつかしい日のこと。



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