被写体の君
雨の日
私が人生で初めて恋をしたのは、高校二年生の冬でした。
最初から私たちの出会いは、
残酷でした。
生まれてすぐに私の母の体はボロボロで、父は初めからいないようなものでした。死んだのではなく、父にならなかったのです。
私が生まれる前に、母を捨て、まだ生まれる前の私を捨てたのでした。
私が生まれてからというもの、私は誰も、幸せにしませんでした。自分でさえも、なぜ生まれてきてしまったのだろうと思うほどに、自分が嫌いで憎くて恨みました。
でも母は言いました。「生まれてきてくれて、ありがとう。だいすきよ。」と。
頭の中は混乱しました。あなたを苦しませることしかできないのに。あなたの人生の可能性を奪うことしかできないのに。
なぜ、アイシテクレルノ。
考えました。考えて考えて考えて、やっと、涙が出たのです。
理由なんてないから。理由もなく人を愛することこそが愛なのだと、そう気づいたのです。