リリー・ソング
クリーム
ビー玉みたいな、baby
そんな両眼で見透かさないで
ピンと立った白い、baby
そんなお耳で聞いてちょうだい
可愛い足がグラスをひっかけて
水が散らばり虹を描く
仕方ない子ね、笑ってあげるわ
私のキュートなキュートなクリーム
「ーーはい、OKでーす! 次お願いします!」
目まぐるしく点滅していたカラフルな照明が一瞬で落ちて、張り上げた声がリハーサルの終わりを告げた。
終わるのは私だけなんだけど。
「どう、歌いづらくない?」
深夜が小さなグランドピアノの前から私にそう声をかけた。
「平気だけど…これ、ほんとにつけてやるの?」
私はため息をついて頭に手をやった。そこにはネコ耳がついたカチューシャがある。ふわふわ、白いファーの。
「可愛いよ、よく似合ってる。」
イヤホンをしてカチューシャをつけたら歌いづらいかもしれない、とリハーサルから私はネコ耳をつけて歌わされている。ヒールの具合に慣れたいから靴も、そうしたら服も、と、結局すっかり本番の為の格好だ。
このシングルはクリームを見ていて二人で作った可愛らしい曲だから、白い耳をつけて白いミニワンピースを着る趣旨はわかる。わかるけど恥ずかしい。
ネコ耳をつけようなんて誰が言い出したんだっけ? ジャケットもでもこれをつけて撮影した。
「ハイ、退いてくださーい。」
明るい声が私たちに割って入った。
「あれ? 秋穂(あきほ)。今日は呼んでないよ。」
深夜がステージに上がってきた女の人に言った。