リリー・ソング
「榎木さんが書けって言ったら、書くと思うけど。」
「でも適当な力加減で簡単に歌える曲書いてもらっても、俺たちのプライドが粉々だし。」
深夜がGlintishに作る曲を、私も聴いてみたいと思った。
「紺、そういえば、通ってる美容院を教えてくれない? あのシルバーの髪、すごく綺麗だった。私もそのうち髪染めたいなって思って。」
「リリーが? どんなふうに?」
「わからないけど。ピンクとか可愛いかなって…」
「嘘だろ? 急にパンキッシュだな。」
「勝手にやると榎木さんに怒られるから、許可をもらってからだけど…」
「そこは全然パンキッシュじゃないんだ。」
全然そんなつもりじゃなかったのに、ゲラゲラ笑われた。
「私だって年を取るし、いつまでも清純派じゃないのよ。」
私が口を尖らせて言うと、わかったわかった、と紺は頷いた。
「まあ、リリーだったらピンクの髪も似合うよ。ネコ耳も似合ってたし。」
「それ、そろそろ忘れてもらってもいい? 恥ずかしいから。」
「忘れられないなあ。ずっと会いたいと思ってた女の子がネコ耳で突然現れたんだもんな。漫画でもなかなか無い強烈体験だった。恋に落ちるには充分だったよ。」
「…紺…」
思わず言葉に詰まって見ると、紺はそれまでとは違う、ふっと翳るような微笑みを浮かべた。そして一瞬のうちに顔を寄せてくると、チュッと唇を触れ合わせた。
二度目のキスだった。
「俺、リリーが好きだよ。本当は交際宣言の会見を開きたいくらいなんだ。」
「何馬鹿なことを…」
三枝さんがすかさず、呆れ返ったように口を挟んだ。