リリー・ソング
秋穂さんと別れて、私まで手放そうとして。
一人になろうとして。
またたった一人で、海の底に沈み続ける気でいる。
「違うでしょ。どうしてそんなこと言うの? 私は深夜のものなんじゃないの? 深夜がずっと言いたかったことは、そうじゃないでしょ? どうして言ってくれないの?」
矢継ぎ早に責めると、深夜は苦しそうに眉を寄せて、また黙った。
「ねえ、深夜。言って。」
深夜は首を振る。
「…駄目だよ。」
こっちを見ようとしない深夜の両肩を掴んで、私は顔を真正面から向き合わせた。
「深夜が言わないなら、私が言う。」
「リリー、」
「深夜が好きよ、愛してる。誰よりも大切よ。ずっと深夜のものでいたい。」
「リリー!」
深夜が声を荒げた。初めてのことだった。
「…リリー、頼むから。」
「苦しまなくていいの、大声で私を愛してるって言って。私は全部深夜のものなのに、どうして離れようとするの? そんなに私が嫌になった?」
「そうじゃない、そんなわけない。だけどリリーをいつまでも僕に縛りつけておくわけにはいかないよ。わかってるだろ?」
「今更なんなの?!」
叫んだ。信じられない速さで涙がこみ上げて、堪える間もなく溢れた。
「私を見つけたくせに。私を救ったくせに、私を歌わせたくせに、私を愛してるくせに!!」
泣きじゃくって言い募る私を宥めるように、深夜はごめん、と言った。
謝ってほしいわけじゃないの。