リリー・ソング
「いつまでも夜明けが来ないのは違う、いつかそう言っただろ。その通りだと思った。どんなに僕が必死で曲を作ったって、きみを引き止めたくたって…きみは今まで僕にそれを忘れさせようとしてくれたけど、終わりは来る。だってきみは生きて歌っているし、僕は兄だから。」
「ねえ…」
私は遂に口を挟んでしまった。このままこんなことを聞き続けることなんか、耐えられなかった。
「深夜はそうやって何もかも酷いことだったみたいに言うけど、そうじゃないの。私は深夜が好きだから。私と深夜が求めてたのは同じことだったし、これからも同じなの。ただ私は、深夜が自分を責めて、苦しんでることだけがつらいの。だから…」
深夜はまた首を振った。違うよ、そうじゃない。小さな声でそう言った。
「何が違うっていうの?」
「アネモスコープの…朝比奈くんとのシーンを見たとき、なんてむごい仕事をさせられるんだろうと思ったけど、単に散々きみを苦しめた罰が当たっただけなのかもしれないな。こういうことなんだと思ったよ。きみは僕が居なくても、こんな顔をして笑える。僕じゃなくても、本当は別の誰かを愛せるんだ。きみはただ、そうしようと思わなかっただけなんだ。僕の為に。」
どうして? どこまでも深夜は私の言い分を認めない。
私は深夜を一人にしたくない。このまま背中を押されて、一人で朝へ放たれることだけは、絶対に嫌だ。
そう思ったのを見透かしたように、深夜は笑った。
「きみは優しい。僕よりも僕のことを想ってくれる。」
「深夜が自分のことをないがしろにし過ぎるから。私が居なくなったら、どうやって生きていくつもりなの?」
深夜は、そう、と頷く。きみは正しい、と。